シャトーブリアンは火入れで変わる|柔らかさ・肉汁・余韻を引き出す料理人の技術

前回は、シャトーブリアンがヒレ肉の中心部分にあたる、
とても希少な部位であることをお話ししました。

今回は、シャトーブリアンを扱う上で最も大切な
「火入れ」についてお話しします。

シャトーブリアンは、非常に柔らかい肉です。

ただし、柔らかいということは、
同時にとても繊細だということでもあります。

ここは、料理人として特に気を使うところです。

シャトーブリアンは、脂が多い部位ではありません。
そのため、火を入れすぎると脂が補ってくれる、
というタイプの肉ではありません。

ほんの少し火が入りすぎるだけで、
水分が抜け、食感が変わってしまいます。

数秒。
ほんの数度。

その違いで、シャトーブリアンの印象は大きく変わります。

しっとりとした食感になるのか。
少し硬さを感じる仕上がりになるのか。
肉汁を中に抱えたまま仕上げられるのか。
それとも、旨みを逃してしまうのか。

シャトーブリアンは、
「焼けば美味しい肉」ではありません。

シャトーブリアンは、
火入れで価値が決まる肉です。

シャトーブリアンの火入れによる食感と肉汁の違いを比較した図解

うしうららでは、シャトーブリアンを扱う時、
肉の厚み、温度、状態、焼き上がりまでの時間を細かく見ています。

もちろん、毎回同じように焼けばいいわけではありません。

同じシャトーブリアンでも、
その日の肉の状態によって火の入り方は変わります。

だからこそ、シャトーブリアンを焼く時は、
今でも少し緊張します。

この緊張感は、悪いものではありません。

むしろ、料理人として大切な感覚だと思っています。

お客様に一番良い状態でお出ししたい。
シャトーブリアンの柔らかさ、肉汁、余韻をきちんと感じていただきたい。
そのためには、最後の数秒まで気が抜けません。

「今まで食べたシャトーブリアンと違いますね」
「柔らかいだけじゃなく、旨みが残りますね」

そう言っていただける時、
シャトーブリアンという部位の魅力を、
少しでも正しく引き出せたのかなと感じます。

シャトーブリアンの美味しさは、素材だけで決まるものではありません。
火入れ、温度、提供のタイミング。
そのすべてが重なって、ようやく一皿になります。

明日は、なぜシャトーブリアンが高いのか。
希少性だけではない価値の理由についてお話しします。